「取調室」という「密室」の問題〜「取調室」のインカメラ化を!〜


「取調べ」とは何のため誰のためなのか・・・「取調べ」に対する疑問


 「所得格差による刑事事件での被疑者の人権保護の落差の問題」でも述べさせて頂きましたが、
私選弁護人を雇えない方は、当番弁護士制度など弁護士会のボランティアはありますが、法律上は
弁護士は自分で雇わない限り捜査段階ではつかないわけですから、弁護士などに相談することも
ないまま取調べを受ける方も少なくないようです。そして、「再犯を繰り返している常習犯」の
ような人でない限り、一般的な「法的知識はあまり持っておらず、取調べというものを初めて
経験する人」の場合、「警察は悪い人を取り締まる存在で実際やってない無罪の私が無罪なのを
ちゃんと説明して話せば分かってくれてすぐ解放してくれる」と「誤解かもしれない事」
を思っていらっしゃるし方がおそらく多いかと思います。



 しかし、実際は、「本当に『悪』を憎み『真実』を明らかにして、
『犯罪を行ったのが真実である人』を取り締まる」ような「たまにいる良心的な刑事さん」にでも
当たらない限り、警察の中の一部の警察官には犯罪が起きたら、『疑わしい存在』をマークしたら、
刑事ドラマのように『実際、白か黒か』を取調べで調べるのではなく、良心的な刑事さんの
場合以外では、『疑わしい=犯人として、逮捕前から、その『疑わしさを強める証拠や証言』
以外は、仮に『疑いが晴れる根拠となるような証拠や証言』を刑事が見つけたとしたら、
それは驚くべき事かもしれませんが、『事件と関係ないもの』として無視して放置する」
という事があるかもしれません。


 一度犯人であるとターゲットにしたら、事実か間違いか関係なく、刑事ドラマのように
「実際にシロなのかクロなのか」を調べるためでなく、「犯人」として「有罪」にできるような
証言や証拠を調べるのが警察行政の姿勢において少なくないと、今までの冤罪事件などの例を
見ますと感じます。


そして「取調室」という「密室」へ・・・


 そして、最終的に逮捕するわけですが、今述べさせて頂きましたような事は、言いかえれば、
「事実であろうがなかろうが、犯人であるとターゲットに決めた相手について、
『実際には白か黒か』と判断するために証言や証拠集めをするのでなく、先述のように、
『黒だ』と裁判で使える証言や証拠のみを集めて、それらがある程度集まったら、
『犯人としてすべき自白内容などのアウトラインとシナリオ』を作っておき、
それが製作出来次第、逮捕する場合が、少なくないとは言えないと思うのですが、
それで「取調室」へと舞台が移る事になります。。


 そこにおいては「取調べ」が行われるわけですが、いくら相手が先述のように
「自分が無罪なのは自分が一番分かってるし、ちゃんと話せば誤解がとけて分かってくれる」
と無罪を訴えたとしても、それは『シナリオから外れる』内容ですから、ウソだと断定され、
シナリオにそぐう発言をするまではシナリオに合わない無罪だという発言は、徹底的にウソだと
罵倒されるケースも少なくないようです。


 そして、ウソだと罵倒程度ならまだある意味いいのかもしれませんが、先ほどのほかの
エッセイでのように、「所得格差による刑事事件での被疑者の人権保護の落差の問題」で
申し上げました「捜査段階」から「私選弁護人」を雇える方の場合においては、基本的には
違憲・違法・不当」な取調べを行った場合、「私選弁護人」はその事実を訴えて問題となる
でしょうし、その事件に関しては、もしその通りの事実があったとしたら、
無罪となるはずですし、「私選弁護人」を雇っている方に対しては警察の側も
「弁護人のいない被疑者の場合と違って」まだ極端な無茶はできないかと思います。


 逆に言って、その「弁護人のいない」方に対しては全く異なり、それを知らないで
先述のような「話せば分かってくれる」「無罪なのに有罪になるわけがない」と信じている方には
ショッキングだと思う事が起きると思います。他のエッセイで「捜査段階」から「私選弁護人」を
雇われている方の場合をお話しましたが、これもまた、少なくない方々の間で誤解があるのですが、
よく、アメリカ映画などを見ると、「弁護士が来て同席するまで黙秘する」というような台詞の
シーンがありますが、第一に日本の場合、「捜査段階」から「私選弁護人」を雇われている方の
場合ですら、弁護士が取調べに同席する事はできません。それでもまだ、まだ「弁護士のいない」
方に比べたら警察としては下手な事はやりにくいとは思います。


 しかし、場合によっては私選弁護人がついている方に対しても、「取り調べ室内で起きたことは、
逮捕されたその被疑者以外、基本的に警察側の人間しかいないから」、極端な事を申し上げれば、
やろうと思えば、証人が警察側の人間しかいないわけですし、良心的な警察官の方が告発して
くれることでもあれば別ですが、少なくとも私はそのような例は知らず、あっても少数だと
今までそのような告発をなされた方を私は聞いた事がないため、思います。


 ちなみに、「不当な取調べがなされたことに対しての証人がいないなら、証拠として、
カセットテープレコーダーなどやビデオカメラを持ち込んで、捜査の様子を録音や記録をすれば
いいのでは」と解決策として思われる方も中にはいらっしゃるかもしれません。


  しかし、残念なことに、少なくとも被疑者の段階ですと、逮捕を経ているため、逮捕は新聞などで
明日逮捕など報道されるような人でもなければ、突然行われるかと思いますし、その時に
たまたまテープレコーダーやビデオカメラを所持していた場合でも、所持品として留置所に
持っていけるか、といえば、留置場までは持ってはいける可能性があるかもしれません。
おそらく押収される理由もないと思いますし、領置しなければいいですから、もしも録音機や
録画器を逮捕時に所持していた場合は可能なように思えるのですが、所持品として所持するのは
留置所で、取調室への携行が認められるか、となると、それはできないようで、
留置場に置いていくことが求められるようです。


 また、逮捕時に持っていなくても、弁護士との接見や差し入れなどで受け取ればいいのでは、
と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、少なくとも弁護士との接見でテープレコーダー
などの録音機器とテープなどの録音媒体を渡すことは禁じられています。これは確かに
そのような危険性があるかもしれないと思うような理由なのですが、
被疑者に対してテープレコーダーとテープなど、情報を伝えられるものを渡す事を認めると、
共犯者や偽証を行う相手との口あわせなどに用いられるから禁じられているのだそうです。
だからホリエモンがパソコンで株価が知りたいと留置所で思っていたと聞いた事がありますが、
おそらく、それらパソコンとモバイル通信端末がダメなのも、同じ理由なのだと思います。


 その点、任意同行の場合は逮捕でないため、おそらくテープレコーダーやテープの持ち込みは
できるのではないかもと思います。そのため、取調べの様子を録音してインターネット上で
公開されている方などもいらっしゃるようですが、警察の場合の任意同行はほぼそのすぐ後
逮捕へと繋がってしまうかと思いますので、その後はどうなのか分かりません。


おわりに・・・「取調室」という密室の問題と「取調室のインカメラ化」の必要性


 以上述べさせて頂きましたように、逮捕後の取調室の中はまさに完全な密室であり、
いくら憲法上被疑者の人権を保護しても、いくら刑事訴訟法で細かく不当なことをやっては
ならないと定められていても、この弁護士すら同席して入れない密室に入ってしまえば、
基本的に被疑者はたった一人で複数の刑事さんたちと、あくまで推定無罪が原則の「被疑者」である
はずなのにも関わらず、どれだけイヤで部屋から出してくれと言っても、受忍義務とやらで
その密室にいなければならず、もし、基本的人権を侵害する違憲的な、刑事訴訟法に反する違法な、
公序良俗から考えて不当な、いちいち書かせて頂くまでもなく想像して頂けるような、
許しがたい事があった場合、仮に良心的な刑事さんがいらして内部告発をされる、
などのことでもあれば別ですが、そのような例を残念ながら聞いた事がありませんし、
だとしたら、それらの共謀して内部告発なんてあるわけもない刑事さんたちにより、
まさに好き放題に扱われるのが、取調室だと言えるかと思います。


 ちなみに20時間くらいぶっつづけで当然眠らせることもなく休憩もなく行われ
自白をさせられた、取調室で行われた取調べについて、
「20時間も不眠不休で尋問を行うのは、自白の強要にあたる」として当然
憲法第38条違反だとし、訴訟が当然起こされましたが、
結果としては最高裁はそれは自白の強要に当たらないと「合憲」とする、
信じられない判断が行われました。


 そのような状態でなされた自白を基にして、裁判が行われてしまい、その法廷において、
自白を撤回したとしても、「では何故あなたはしてもいないことを自白したのですか?」
と聞かれて、警察行政、検察行政の行った不当性を訴えたとしても、なかなかそれが
認められることがないのは、申し上げましたように「取調室は密室」だから、
被告人以外、誰も証言をしてくれる人がいないからです。


 では、どうすればいいのか、という問題について、「司法改革に関する個人的意見」
では不勉強なため、述べさせて頂いていませんでしたが、「取調室にテープレコーダー
などの録音機器、ビデオカメラなどの録画機器を設置し録音録画することを義務付けて、
取調室をインカメラ化」すること、が弁護士さんを中心として、強く求められています。
これに対し、警察行政側は、「被疑者がそれではしゃべりにくくなる」といっているようですが、
しかしそれが理由としては妥当でないのは、実際、警察行政側は「有罪」だと立証するのに
役立つ被疑者の発言を録音し、法廷に証拠として提出していることからも、分かります。


 よって、私は「取調室のインカメラ化を義務付けること、もしくは、国選弁護人の
捜査段階での附与と弁護人の取調室への同席を認める事」が必要だと思います。