所得格差による刑事事件での被疑者の人権保護の落差の問題


はじめに・・・憲法上の刑事政策のあり方と現状の問題



 「日本は法治国家なのか?」の終わりの方で述べさせて頂きましたが、


 他に、空文化しているので一番分かりやすいのは憲法9条でしょう。 
これをどうすればいいのかは、「憲法改正論批判」で書かせて頂いているのでおいておいて、
その他の形骸化している憲法条文の例では、刑事事件に関わるもので、
第38条【不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力】の条文がありますが、その内容は、


第38条【不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力】
(1)何人も、自己に不利益な供述を強要されない
(2)強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、
これを証拠とすることができない
(3)何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、
又は刑罰を科せられない。


 などの3項からなっていますが、自己に不利益な供述を強要されないかどうかは、
冤罪事件の多発を見れば分かりますし、何より、交通事故などで警察のご厄介に人などは、
実感されたことがあるのではないでしょうか。第二の内容も、「別件逮捕
という言葉がよく刑事ドラマなどで出てきますが、本来は刑事訴訟法の学説では、
やってはいけないもの、とされています。


 ただ、それが、「関係性のあるものならおっけー」という風に合憲とされて、
ホリエモンや村上氏などの例はまだいい例で、もっと長く拘留される方もいて、
それで精神的にまいってしまって、自白してしまって、冤罪が生まれるということもあります。


  また、証拠が本人の自白のみなら、刑罰を課せないはず・・・なのですが、
「他の証拠」というのが、実にテキトーなものさえ集めれば、あとは本人を徹底的に尋問して
自白調書だけは完璧につくりあげて、「本人の証拠だけじゃないからおっけー」と
裁判を行い、結局そんな調子だから、これまた冤罪が生まれることもあります。
本来はまさに条文に書いてある、冤罪が生まれるのを防ぐための、抽象的な内容が多い
憲法にしては、具体的な憲法の規定なのですが、警察行政と検察行政と裁判の効率アップのため、
人権を軽視する形で捜査できるように平気で空文化されています。刑事事件の場合ですら、
このように空文化している日本の憲法の空文化、日本の法律の形骸化、法治国家としての腐敗は、
みなさんが「警察にかかわらないでやっかいごとにかかわらないで生きる分」
には気がつきにくいかもしれませんが、実際はそのすぐ外をのぞいてみると、
思っている以上にひどいものではないでしょうか。


 という問題点を述べさせて頂いたのですが、そこで述べさせて頂いたように、
まず憲法上での刑事政策のあり方として定められているのは、


第38条【不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力】
(1)何人も、自己に不利益な供述を強要されない
(2)強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、
これを証拠とすることができない
(3)何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、
又は刑罰を科せられない。


 などの3項を持つ第38条から続くいくつかの条文になるわけですが、問題はこれらが
守られているかどうか、ということだと思います。しかし、非常に残念でやるせない事に、
御殿場事件などで見られるような、刑事捜査、刑事政策における問題が、かなり深刻なものとして
存在するように思えます。


所得格差による被疑者の人権保障の落差の問題とは


  憲法においては、第38条の2項で、「不当に長く拘留若しくは拘禁された後の自白は、
これを証拠とすることができない」と定められています。しかし、最初から余談的になりますが、
最近の事件では、ホリエモンや村上氏などが逮捕、拘留されて報道された例があります。
しかし、ホリエモンや村上氏などの例は拘留期間は確かに比較的長かったですが、
高額な報酬を支払って優秀な弁護士を雇われたかと思います。この、取調べ段階において
弁護士を雇えるかどうかは、まず弁護人がいる場合は、ホリエモンや村上氏などもそうですが、
接見するたびに法的にどのような供述をしたら問題になるかの細かい指導をされてるでしょうし、
仮に強制、拷問、脅迫と、法的論証など次第で問題にできる例があったとしたら、
実際それに当たるか分からない事でも、法的議論で法的論証をうまくその優秀な弁護士が
訴えて、「強制、拷問、脅迫に値する行為があった」との裁判所の判断を勝ち取れば、
イコールほぼ有罪を立証する証拠などがあっても、無罪とされるはずですから、
警察や検察は報道では東京地検の取調べがいかに厳しいか、逮捕されれば社会的地位なんて
関係ないと大々的に報道されていましたが、個人的な考えですが、実際はホリエモン
村上氏に対して、そんなにあまり過酷なことができないのは、前述の理由から考えられます。


 それに対し問題は一般の人、特に経済的に裕福でない、もしくは困窮している人で、
社会的地位も低い方に対しては、長く拘留されるのはほとんど確実として、
よく誤解される方がいらっしゃいますが、日本国憲法で「被告人はお金がなくても
国費で国選弁護人をつけてもらえる」とされているから、「国選弁護人だと質が低いから
不平等だと文句もいうが、ちゃんと弁護人をつけてもらえるんだから不平等だとか文句を言うのは
ワガママに過ぎないよ」という方が、けっこういらっしゃっるようですが、国選弁護人の
質の問題は置いておいて、「ホリエモンや村上氏など私選弁護人を雇える人と、
お金がなくて国選弁護人を付けてもらう人の間での『極めて不平等』だという点」は、
まず第一に多くの誤解している人に対して実際は、「国選弁護人がつけられるのは
『起訴され被告人となって裁判になった段階』に初めて付けられる」という事です。


  これは、「警察に逮捕された段階、言い換えれば『捜査段階』と呼ばれる段階で、
憲法第38条や刑事訴訟法の原則に反して、ホリエモンや村上氏の場合でも「再逮捕」などの
手法で、伸ばし伸ばしで長期間拘留されるわけですが、ホリエモンや村上氏の場合の例で
申し上げましたように、「私選弁護人」を「捜査段階」から雇える人の場合は、「
捜査段階の取調べで、『どんな発言をしたらどんな風になるか』など
『取調べにおける法的相談など様々な相談』ができる」ことがあります。


 さらに申し上げれば、「捜査段階」になる前、つまり逮捕以前から、所得の高い方は
逮捕されるかもしれない恐れを感じた段階で私選弁護人を雇うかと思います。
その段階で弁護人は、違法なことを奨めることは少ないでしょうが、
最低限、法に触れない、触れるか触れないか議論があるくらいのレベルまでで、
さまざま逮捕後有利になるよう、可能なら「不起訴処分」になるよう、一番一般的な方法では、
被害者に対して多額のお金を払うなどの「民事上の示談」を交渉して取り付けられれば、
犯罪の内容にも当然よりますが、被害者への誠意を考慮して、ということで、
「不起訴処分」を「勝ち取る」ことをもできる可能性もありますし、これがいいか
どうか分かりませんが、強姦罪などの「親告罪」の場合は、主に被害者の方への
金銭的条件などによって被害者側の方と話し合い、「被害者側からの被害届けの取り下げ」などを
してもらった場合は「親告罪」なので100%無罪というか事件自体にならなくなります。


 それに対し、所得のあまりない方は、示談や親告罪での告訴の取り下げなどは
行えないでしょうし、まったくの無防備で「取調室」という密室に臨むことになるわけです。
「取調室の密室性」の問題に関しましては、「「取調室」という「密室」の問題〜
「取調室」のインカメラ化を!〜」で述べさせて頂いているのを参照して頂ければ
幸いに思いますが、そこでの苛烈な取調べ、法的、憲法的に問題のあるようなことまで
場合によっては取調官の一部により成され、そして、自らに不利な証言が、捜査官の
あらかじめ引き出したいと逮捕前に既に描いているアウトラインに沿うように引き出される
可能性があり、場合によっては御殿場事件などのような冤罪が生まれかねない
危険性に晒されることとなります。


おわりに・・・操作段階からの国選弁護人の附与など刑事政策の改革を


 これらの被疑者の所得格差によって生まれる人権保障の落差は、立憲民主主義国家としては、
本来はあってはならない問題ではないでしょうか?「司法改革に関する個人的意見」でも
述べさせて頂きましたが、理想的には捜査段階からの国選弁護人の附与を、
それがかなわないのならば、せめて当番弁護士制度に対する公的支援と、警察行政側の
当番弁護士制度に関しての、被疑者への説明義務を法的に定める事が必要ではないでしょうか。


蛇足ですが・・・司法改革において懸念すること


 日本ではまだ少ないかと思いますが、アメリカなどで少なくなく行われている手段で、
例えばレイプ被害者の方の場合の例なら、裁判となればいろいろな意味で、様々な証言や
証拠が公然と出されることに対して被害者が不利益を受ける可能性を訴えたり、
もしくはひどい場合は「訴訟になれば私は弁護人として弁護」をするが、その「弁護」
において精神的に耐えられないような内容の「被告の無実を証明するため真実を明らかに
するため被告側の被害者に対する反対尋問」をしなければならないが、
その裁判上において、被害者が絶対言われたくない聞かれたくない様々なイヤなことを、
「真実追求のため」尋問しなければならないと、半ば脅しといっていいものまで含めた
「話し合い」などによる「被害届けの取り下げ」まどまであるようですが、
日本の司法がそのように悪い意味でアメリカ化しないことを祈るのみです。



○後記
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