ロシアの戦争と戦前日本との奇妙な類似点

〇はじめに

 ロシア軍が主権国家ウクライナを侵略するための戦争を行い、現地では凄惨な戦闘が繰り広げられています。

 

 ロシアの開戦理由と、その後の戦争の戦闘行為の中での戦争犯罪の問題もありますが、その前に、少し俯瞰させて頂いて、ロシアの論理も考えながらまず書かせて頂きました。その後、現在のロシアの、戦前日本との奇妙なオーバーラップ、共通する事を挙げさせていただきました。

〇ロシアの主張を考えてみる

   ロシアの論理というとアメリカ側はソ連東欧崩壊の際、国際法の法的拘束力のあるものを結んでいなかったかもしれませんが、ベーカー国務長官は確かにNATOは東方拡大を「1インチもしない」と言っていたのですから、その責任は多いにあり、本来アメリカはその点の自分の成した行為がもたらしたものを熟慮すべきに思います。

 

 「NATOが拡大するなら、自国もNATOになればいいのでは」とNATO加盟をロシアが希望したとき、結果的に受け入れる形にできなかったのは、これは確かに、NATOとは対ロシアの軍事同盟であるという心証を与えたでしょう。

 

 これらのアメリカの責任を無視してロシアを完全に世界的悪者として完全に孤立させてしまうと、恐ろしい事が起きるかもしれない、ロシアの非人道的行為や戦争犯罪は許せませんし、それを正当化する片棒を担ぎたいとは思いなどしないのですが、ただそう考えてみたところ、戦前の日本が僕の頭にオーバーラップし、今回このような少し支離滅裂かもしれませんが、文章を書かせて頂きました。

 

〇戦前戦中日本と現在のロシアの奇妙な共通項

 実は、私達の前で繰り広げられているような「侵略戦争を行い孤立化をしていくロシア」を見ると、私には戦前の日本とオーバーラップするのが結構な点であり、驚いています。今のウクライナーロシア戦争は、満州事変から日中戦争。太平洋戦争への道にある意味似ていると思うのです。

 

 なぜそのような事を、というと、まず、自国民が虐殺されているとプロパガンダし、「保護」のためと派兵を正当化しようとし、また「緩衝地帯」として「領土の隣にある他国の領土を緩衝地帯として自国のものにしたい」と、朝鮮半島満州国、と際限なく領土を求めていったあの戦争に、ウクライナ侵略が手法も動機も似ているのです。

 

 国際的にも国内的にも「戦争」といわず「事変」と言い換え「我々は戦争をしていない」と国際社会と国会や国民への報告で主張し、国内で侵略戦争だと反対した者、「反軍部的な内容で皇軍の名誉を傷つける(ロシアの場合軍の栄誉でしたか?)」と逮捕弾圧・言論統制を行うのは、私達にも記憶のある事です。

 

 そして次の段階では、もはや世界各国のひんしゅくを買い、これ以上の戦争を止める国際秩序としての経済制裁、この場合国際連合体制で、戦前日本の場合は国際連盟体制でしたが、そう「経済制裁」をされているだけなのに、自分から孤立していきながら、国内へのレトリックでは「外国に孤立させられ外国の経済制裁に追い詰められて存立危機事態であり自衛のために派兵せねばならない」、と主張し、加害者でありながら信じられない責任転嫁をして猛烈な自分勝手な被害者意識を持って戦争を正当化する事をしたのが頭に思い浮かんでしまいます。

 

 戦前日本との類似点は、その緩衝国として求めた国の国民の「自国文化への同一化政策」もですし、国家としての戦争ならば定めておくべきであるはずの戦争目標の「終わり」が無い、もしくは極めて非現実的である戦争への突入もそうかと思います。

 

 敵国は2日で蹴散らされなすすべもなく容易に攻略できるという楽観論を大前提としていた戦争、その後の楽観論に反した結果としての長期戦化。その相手国の抵抗を、外国、英米からの支援があるからと、援蒋ルートの遮断をしたい英米への憎悪のように、ポーランド国境―ウクライナ西部からキエフへの補給路への欧米への憎悪と…ありうるかもしれない攻撃など…。

 

 制裁でいえば戻らせて頂くと、国際法違反行為での経済的包囲網、在外資産の凍結、ハルノートの実際の内容は最終案でもなかったし、話し合いの余地は十分ありましたが、途中誤訳や内容が歪められ「戦争しかない」と煽り主戦論を唱える者が会議を占める事、そして…今回、似て欲しくないですが、ロシア制裁国への核による奇襲攻撃、でしょうか…。

 

〇戦前日本のような極度の孤立化と狭めすぎる世界観を繰り返さないために

 

 そこまでいくまでに、戦前日本をいえば、は国際連盟常任理事国でありながら、「国連よさらば」と国連を脱退してさらなる孤立を深めました。現代のロシアがもしかしたら行うことをしかねないものとして、仮に中国との約束ができているなら、中国・露とその関係国で4,50カ国くらいで全員国連から脱退して、「中露の新しい国連」もしくは世界を二分する「国際機関」を作るという方策をとるかもしれない恐怖があります。

 

 そうなったら、もはや国際秩序に歯止めが名実ともにかけられない事態になり、個人的には非常に恐怖しています。ただ、中国にとっては西側から政治的にのみ抜けられるなら歓迎でも、経済的に抜ける事は今の段階ではまだあまり取りたくない選択肢ですし、中国と関係国がロシアの脱退に続くかは、中国次第かと思います。ただ、ロシアは孤立化の極地として、一カ国であっても、戦前の日本のように国連脱退をしかねません。そうなれば、ロシアの脱退は国際秩序の極めて大きなリスクとなります。

 

 そのような脱退をしかねないように見えるのは、例えば今現在、ロシアは恐るべき勢いと決意で、「東側」に戻りつつあります。SWIFTからの除外は少なくともグローバル資本主義から「一時的」に除外する事でしたが、その後のロシアの取った撤退表明企業の資産接収と国有化プロセス、各社のリース航空機の差し押さえを逃れるための鎖国的航空政策、撤退企業の知財所有権の否定、デフォルトの容認…どれを見ても、西側が予想していた以上の急速な孤立を……急速に「東側」と鉄のカーテン…今回のカーテンはバルト海からアドリア海ではありませんが、それを引き下ろそうとしているようにしか見えません。極度の閉鎖国家化をすることも十分にあり得ます。

 

 本当に鎖国も辞さず、というのなら、その「自信」の背後にあるのは、中国の工業力を背景とした、工業生産品から人民元など外貨の調達ができる「別の」供給があることでしょう。

 

 ですが、その場合、中国も制裁対象になり得ますし、中国はロシアと蜜月関係になると報道されていましたが、正直、最も心配していた、「ウクライナ、台湾という両国の『核心的地域』を同時侵攻しアメリカに二正面体制を強いる」といった、最悪のシナリオは、ある意味で、知っている限りでは、今回のウクライナ侵攻は、中国指導部はどうやら寝耳に水だったようなので、当然連携も取れず、中露が組むなら一番効果的である、アメリカが対応できないスピードでの奇襲による二正面作戦での勝利は、もはやなくなりました。

 

 むしろ、アメリカは、世界秩序、アメリカ主導の秩序から「外れた」場合にどのような目に遭うかを、中国に見せつけ牽制しつつ、中国も我が国が台湾を侵攻したらどうなるか、というモデルケースを注視して、ロシアから一歩足を引いたように対応しているように思えます。

 

 中国としてはEU各国の結束を切り崩すため手を変え品を変え色々な努力を行っていましたが、今回のウクライナ戦争でEU・NATOの結束はこれ以上ないほどまで高まってしまいました、中国としては今までの努力を水の泡にされ、内心穏やかではないのではないでしょぅか。

 

 お話が逸れましたが、極致な孤立化は極めて危険で、孤立化をさせないためには撤兵後の制裁解除とインターネットの自由を最大限利用した、「ロシア」という狭いコミュニティだけでなく、世界中で繋がれるインターネットを、自由にアクセスする権利を、条件にできたらいいのにと思います。

 

〇ロシアの極度の危険な孤立化をさせないために私達ができること

 

 もしロシアが極度の孤立化で暴走することがあれば、戦前日本がパールハーバーをやった事を考えると、ロシア制裁国への軍事施設への奇襲核攻撃は、ミサイル技術の発達で可能になっているのが頭が痛いです。実用性はどれくらいか分かりませんが、少なくともロシアはミサイル防衛を役立たずにする極音速ミサイル、西海岸、東海岸に壊滅的な津波を引き起こし破壊すると主張する核推進核魚雷、そういった技術的な優位性を持っているそうですが、そのような過信があると、「技術がアメリカに渡って陳腐になる前に使わなければ」という思考、「太平洋地域の米空母の数がまだ少ないうちにパールハーバーしなければ」に似た思考に陥りかねない気がします。

 

 また大国ロシアの解体を西側は狙っているのだという異常な被害妄想、戦前の日本だと日米最終戦争論のような異常な物の観方を考えると、戦前の軍国日本に似ていて、あながち先制攻撃、しかも核による先制攻撃があり得ないと否定することは難しく思い、とても怖く思ってしまいます。

 

 私達個人個人がこの大きな国際情勢の前でできることは何か、を考えると、何もないさ、なるようになるさという論調のかたもいらっしゃって、反戦デモや反戦抗議活動をしても無意味と思うかたもいらっしゃいますが、ベトナム戦争を止めたのは、明らかに世界中の反戦運動を受けたからだと思いますし、その後のアフガニスタンだったりイラクだったりでの戦争も、同様に反戦世論を無視できず極めて制約されたと思います。

 

 確かに直接的に、例えは3月16日の新宿西口での抗議、とかが、具体的にそれが原因で戦争が止まった、ということは難しいでしょうが、ロシアの中にも、多くの戦争反対の市民がいます。ロシアの市民に連帯して反戦の抗議を上げていく事は、遠回りでありあまりにも間接的で実感がわかないかもしれないけれど、平和への確実な一歩に力になれる、またロシアを孤立化させない、連帯だと思います。

 

 とりとめもなくなってしまいましたが、最後に、そのようにロシア=悪者というような単純化を行って考える事は、戦前日本がパールハーバーまでいったことを考えると、ロシアも軍事施設への先制核攻撃を行ってもおかしくありません、反戦の声は上げても、反ロシア人や反ロシア文化などは反対する、という事をこのような戦時下に似た異様な日本の現在の空気では、自覚的に行わなければならないのでは、と思ってしまいます。