迫り来る「表現規制」「インターネット規制」の危険性


○はじめに


 日本国憲法では表現の自由、思想・良心の自由、通信の秘密など基本的人権が定められています。
それを制限する法律を作るのは当然ながら違憲なのですが、そこはそれらを規制しようとする人は
考えていて、例えば「児童のため」「経済のため」と違った理由をつけて、規制を正当化しようと
しています。今回はACTA、児ポ法改正、秘密保全法を例に出させて頂きましたが、
その他似たような形でネット規制表現の自由の規制をしようと画策している
法案が様々でてくる、でていると思います。もし追加で他にもこんなのがある!と
いうのがございましたら、教えて頂ければ幸いです。


○ACTAの危険性


 まず、ACTAのひな形となる概念が、2005年のグレンイーグルズ・サミットで
小泉首相が提唱して、その後条約文化されたACTA(Anti-Counterfeiting Trade Agreement)は
偽造品の取引の防止に関する協定」と訳されていて、前国会で批准が
可決されました。


 名前をお聞きになって「なるほど、偽造品を取り締まる、中国にパクられてばかり
だから結構じゃないか」と思われる方が少なくないと思いますが、
いわゆるパロディや二次創作サイトから、著作権のある画像のURLが貼られた掲示板まで、
最悪の場合では、ですが、影響のある条約で、インターネット規制
一環ではと懸念が持たれています


 一応、条文中には表現の自由やプライバシーの尊重を前提とすると
されているのですが、ヨーロッパ各国ではストライクポリシーという形で、
プロバイダがP2Pを使った著作権侵害が疑われる顧客に対して警告を発して、
それでもファイルシェアリングをやめない場合はプロバイダサービスの停止を
行う、という感じで運用されていて、違法ダウンロード法制化などを見ると、
日本の場合は「模造品の防止のために」「著作権侵害情報かどうかチェックする」のは
プライバシーの侵害にならない、といった論理が使われそうで、日本の司法警察行政は
拡大解釈が大好きですから、憲法で保証された通信の秘密が警察行政の
胸先三寸で侵害される恐れは十分にあります。


 ACTA、中国にパクられてばかりだしいいじゃないかと思われる方が
いらっしゃるかと思いますが、中国はACTAを批准の意思をまったく見せて
いませんし、せめてヨーロッパ各国ならパクりに厳しく批准してくれるはず、
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、EU議会はACTAについて、
表現の自由や個人のプライバシーの侵害になる恐れがあるとして否決してしまい、
正直日本が批准するのはメリットがありません。


 また、先述のようなパロディや二次創作から著作物である画像が掲示板に
貼られた場合、今までの著作権法では親告罪でしたが、ACTAで
非親告罪、つまり著作権者から訴えがなくても、警察行政がインターネットを
巡回していて違反だと思うものがあったら、逮捕できるようになる、
というのが、最悪のパターンのケースとして警鐘が鳴らされています。


 もちろん、ACTAが直接適用されるのではなく、ACTAを受けて
これから法整備がなされる訳ですが、その際にインターネット規制
狙っている警察行政の警察官僚が、「模造品の防止のための法案」として
議員に草案を手渡すのが、実はインターネット規制のために運用する意図を
持って定めたもので、成立したら模造品の取り締まりよりネット規制
表現の自由やプライバシーが侵害される、という可能性もかなりあるので、
これから注視していかなければならないものだと思います。


○児童ボルノ法改正案の危険性


 自公政権から民主政権にかけて、児童ポルノ法改正に関して極めて広汎な方たちが
反対の声を挙げていました、「児童ポルノ禁止、当然じゃないか」と思われる方も
いらっしゃると思いますが、この児童ポルノ禁止案にはいくつか大きな問題点がありました。


 一つは被写体が実在の人間だとして、その被写体が児童ポルノ法でいうところの
18歳未満であるかを、どう判断するかで、「見た目が18歳未満っぽいなら」と
極めて恣意的な面があることがあります。


 児童ポルノの単純所持は定めてないのは日本とロシアだけ、とよく規制推進派の
方はおっしゃられますが、18歳未満という、大人か子供か明確に判断のつかない
年齢であるのが大きな問題です。


 また、アメリカの場合は「文学的・芸術的・政治的・科学的な価値が一切ないもの」
などは以外は認める事や、ドイツでは13歳未満を「児童ポルノ」とし、18歳未満を
「青少年ポルノ」と定めていて、明確に児童ボルノと分かるのでなければ、
罰さないようになっています。


 しかし、そのアメリカでも、確かアフガニスタンに派兵されてたアメリカ軍兵士が、
家族から娘の写真を手紙と一緒に送って来られたのですが、その中に娘が裸の写真があり、
これは児童ポルノだと起訴され軍事法廷で裁かれるという、異常な自体が起きています。
(ソースを今探しているところです、申し訳ありませんがURLをご存知の方いらっしゃいましたら、
お知らせ頂ければ幸いです)


 また、これの例のように数年前にダウンロードした「日本の女子大生」というポルノを、
当時はとっくに削除していたのですが、突然ある日FBIが乗り込んで来て、ダウンロードしただろうと
問いただされ、ハードディスクから削除したはずのデータを復元して起訴した、というように、
異常な運用が海外ではなされています。日本はそれに従うべきなのでしょうか?
恐ろしくてダウンロードができない、もしくはメール添付で児童ポルノを送られた
場合、ローカルに保存されて削除したのを復元されて逮捕される、というような、
冗談みたいな用い方が、海外での運用の例を見ると反対派の誇張と言えるのでしょうか。


 第二にインターネット規制としていわゆる石原元都知事が打ち出した「非存在青少年」
などを例とする、二次元創作物が18歳未満の外形をしていたら、都知事の規制の例では
「ランドセルや制服、教室などが明らかに描写されている場合は、18歳未満と判断される。
少女のように見えても、そうした点が表現されていなければ、18歳未満とはされない」
と言われていましたが、そうだとしても警察行政の恣意的判断の余地がいくらでもある
この二次元創作物を規制することの問題があります。実際、こちらのニュースのように
スウェーデンで二次元創作物の児童ポルノを所持していたとして逮捕され、最高裁で無罪判決を
勝ち取ったスウェーデン人がいますが、司法当局者は「保護すべき実在の児童がいるのに、
このような被害者のいない画像を取り締まるのに人的リソースを割くのはまったくの無駄だ」
と疑問を呈していました。


 児童ポルノ規制の保護法益は被害児童の保護と「個人法益」ですが、この「非存在青少年」など
二次元創作物の規制はこちらで述べさせて頂いているようにいわゆる「被害者のいない犯罪」で、
保護法益があると思えないのですが、そのため警察は「社会風紀規制」という「社会法益」化
するとなると、社会風紀を乱すもの、というものが極めて不明瞭で法律では定められません。


 そのため警察行政による胸先三寸で恣意的な運用をされかねない、実際この児ポ法改正案を
強く求めているのは警察官僚だ、とも聞きますから、「児童ポルノ規制」という大義名分の
名の下、表現の自由を規制しようとする動きは、厳しく監視し、反対の声を挙げなければ
ならないと思います。



○「秘密保全法」の危険性


 提出される法案名は「秘密保全法」という名前ではないかもしれませんが、
「秘密保全法制」というものが、表向きは尖閣での不法侵入した漁船を捕縛する際の
ビデオの流出をネタに、実際はスパイ防止法制定などの流れを汲んで、成立させようと
警察官僚や自衛隊、それらの出身議員、自民党など右派政党が、制定しようと
やっきになってます。


 「国家の安全保障のためだ、いいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、
国家情報のうち、「国の安全」、「外交」、「公共の安全及び秩序の維持に関するもの」を
「特別秘密」として指定し、その特別秘密を「漏洩」「探知」「収集」した者を
公務員だけでなく普通の市民も含めて罰しようというものです。


 「素晴らしいじゃないか」と思われるかもしれませんが、逆にいえば
「特別秘密」の中身は漏らしたら逮捕なので、「国の安全」や「公共の安全及び秩序の維持に関するもの」を
いくらでも拡大解釈して「特別秘密」に指定しまくることで、今ですら行われている
行政の情報隠蔽がさらに合法的に隠蔽できるという事が大問題です。


 そして、「漏洩」したら罰則はまあ、本当に国家機密であるなら妥当かもしれませんが、
問題は「探知」「収集」した者も罰するという事です。その「特別秘密」に指定された情報が
本当にさっきの3つの国家機密に当てはまるのか、と調べようとしたら、それ自体が
犯罪行為として罰される、だから「特別機密」に指定されたものが本当に国家機密に
値するような内容なのか、誰も知る事ができない、という極めて恐ろしい法案です。


 このように国民の「知る権利」を大きく侵害する法案ですが、福島第一原発事故での
ネットの活躍を見ての通り、インターネットが極めて大きな国民の「知る権利」を
享受できる知る権利に資する場としてあるわけですが、この法案がもし福島第一原発事故
前にできていたとしたら、恐らく多くのことが今回どころの比でなく隠蔽されていたと思い
恐ろしくなります。


 「それ」をググっただけでも「探知」になりますから罰されますし、この法律の共謀犯、
煽動犯、教唆犯と拡大していくと、「尖閣のあの動画誰かURL貼って」といえば
教唆犯になり、貼った人は「漏洩犯」で罰される、といった、国民の知る権利に
資する形で発展してきたインターネットに大きく規制をかける事になってしまいます。


○インターネット規制の目的は何か
 
 
 やたら犯罪や反社会的行為とネットを結びつけ、ネットを規制しようと
画策している政治家や警察官僚ですが、何故インターネット規制をしたいのでしょうか。
それはインターネットに不確定な情報ながらも「政・財・官」についての個人的経験から
内部情報など「ナマの声」が発信され、商業マスメディア上では知り得ない事が多く流れている事、
その情報を個々人が世界中に発信できる「表現の自由」の最たる手段であるインターネットが
あるかと思います。


 「表現の自由憲法で保証されているのにおかしいじゃないか」と思われる方も
いらっしゃるかと思いますが、だからこそ、「児童ポルノ規制のため」「模造品防止のため」
国益を守るため」と、いかにもそれらしい反対しづらい理由をつけて反対しづらくしつつ、
その条文の警察行政の恣意的な拡大解釈で、健全な表現の自由で今まで作り上げられてきた
知的遺産を、潰されかねないのは、恐ろしい事だと思います。


 しかし、今までネットユーザーが反対してきたおかげで、例えばネットの治安維持法とも
言われた「青少年インターネット規制法改正」などもある程度自由が守られるよう持ち込む事ができました。
それは元々「青少年に悪影響を及ぼすサイト」は削除が求められ、削除をしなかった者は
「6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金」が課せられるという恐ろしいものでした。


 ダウンロード違法化は可決してしまいましたが、今度の選挙で自民が単独過半数
占めた場合、表現の自由やインターネット規制が強まる危険性が極めて高いのが
児童ポルノ改正案」なども含めたくさんあります。そうならないよう、
ネットユーザーが無関心でいずに、選挙での投票や反対の声を挙げていく事こそ、
今求められているのではないでしょうか。



○後記
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