姉歯さんについて思うこと

 最近、構造計算書が偽造されたマンションがバンバン明るみになって大問題に
なっていますが、それについては 新聞に詳しく書いてあるので割愛して、姉歯さんを見てて
思ったことがあります。


 発覚した当初、テレビの取材にも、 淡々と答えて、「まるで他人事のよう」と非難がごうごうに
されましたが、僕はあの姉歯さんを見て、「ある意味、”スペシャリスト”だったのかなあ」と
感じました。


 「スペシャリスト」とは、ナチス時代、ユダヤ人を死の強制収容所にどんどん送り込む
最高責任者で、戦後に逃げていたところを南米で逮捕され、イスラエルで裁判を受けた
アドルフ=アイヒマンの裁判の録画フィルムを、フィクションなど一切加えず、記録フィルムを
淡々と短く編集しただけで ドキュメント映画にした映画です。その中でアイヒマン
「自分はただ命令され職務として忠実に仕事を果たしただけだ」など、淡々と「自分は官僚の
一員で事務処理をしただけ」と語り、あれだけの虐殺を行った責任があるのに、何の良心の呵責
もないのか!と世界の人々に衝撃を与えました。


  しかし、同時に、実は単にアイヒマンは勤勉で真面目で、権力に忠実な優秀な
スペシャリスト」なだけで、 その仕事の内容がたまたま「強制収容所への移送」 だっただけ
なのではないか、という疑問が生まれ、 実際にイェール大のミルグラム博士による
アイヒマン実験」というのがなされました。


 その内容は、被験者を先生役と生徒役に分け、実験の本当の目的は教えずに、先生役が
生徒役に問題を出す、しかし、もしも間違えたら電気ショックを与え、それは間違えるたびに
次の電圧をじょじょに上げていくというものです。


 実は生徒役の方には本当は間違えても電気ショックは与えられず、教授の雇ったサクラ役
なのですが、問題を間違えて被験者の先生役が電気ショックを与えると、激痛を訴え、
もだえ苦しむ演技をします。


  そしてどんどんと問題を間違えて、電圧が上がっていくと、もう苦しくてたまらない!と訴えて、
先生役の被験者は、「もうこれ以上やったら危険です、やめましょう」と最初は研究者に
言うのですが、 「続けなさい。実験のために、貴方は続けることが必要です」と強制されると、
最初はイヤイヤながら、電圧を上げます。そしてさらに間違えていき電圧を上げなければ
ならなくなったとき、また「やめた方がいいのでは」と言いますが、「続けなさい」と命じます。


 そうしているうちに、被験者は反対の言葉を発する事なくやるようになり、最終的に
電気ショック装置の最大電圧で、死ぬほどの電圧450ボルトのショックを与えたのは、
被験者の62.5%にのぼったそうです。スイッチには375ボルトのところで「危険なショック」と
書いていたのですが、450ボルトまでショックを与えた被験者に対して、生徒役が死ぬかも
しれないのに、何故途中で止めなかったのかと言う質問をするとほとんどの人が
「私は命令を果たしただけです」と答えたそうです。


 この実験が与えた衝撃と問題は「権力から命令されて、自分は命令を守っている、
それは正しいんだ。命令を実行しないのは悪であり、命令を真面目に実行するのが
正しいのだ。命令の内容の責任は 命令を出す側にあるから関係ない」という、権力に受動的な
官僚主義的な人間像を、どの人間も持っているのではないか、という「権威への服従の心理」
の衝撃がありました。


 長くなりましたが、姉歯さん自身の罪は当たり前ですが重罪です(法的な刑事責任は
罰金刑ですが)。


しかし、彼が偽造を行ったのは、施工主や建築会社などの「権力」による命令に従うのが
正しいことだと思ったからではないのか、そしてそういった「権力」からの命令というのは、
企業や国家、さまざまな組織で問題になっている、組織ぐるみの犯罪を犯す実際の職員に
とっても同じで、組織の命令に従わなければ悪なのだ、一般社会の「善」や「良心」などの
問題よりも、職務をこなすことが正しいのだという心が あったのではないかと、
テレビインタビューに淡々と答える姉歯さんを見て思いました。



○後記
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