『ラスト・ピュリファイ』(PCフリーゲーム・さんだーぼると)

この作品は、表現規制問題の是非を巡っての論議のわき起こった最中の、
2010年3月に公開された、全年齢対象の「自由の意味を問うADV」です。





  • ○レビュー本文


     舞台はまず、2014年に、中東・カリブ沿岸勢力と軍事大国、おそらくは、
    イスラム教国と中南米の反米主義国家と、アメリカとの摩擦という、
    現在ある実際の政治問題を前提としているかと思いますが、その結果としての
    第三次世界大戦の勃発と、そのエスカレーションによる全面核戦争による
    北米大陸ユーラシア大陸諸国を中心とした国家崩壊、それによる荒廃した世界を、
    「世界倫理機構(International Moraity Organization)」という、
    「永久非武装、永久平等、永久世界平和」というユートピア思想を掲げる組織が
    戦争被害を受けた人々の人心を掴み、世界秩序の「回復」を行った、
    というところからスタートします。

     これは一見、日本国憲法の世界化のように見える、現時点で実際あるユートピア思想に
    見えます。しかしその内容は、「世界平和」、それは国家間の戦争だけでなく、
    集団、個人間の争い事も消滅させるという、人類史上成立したこともない世界を
    主張する思想で、その内容は、いわば、「性悪説に基づく徹底的な性悪の除去」、
    文中の表現をお借りするならば、「真の世界平和を実現するには、人が人であることを
    捨てなければならない。利己的な自由など、もはや害悪」「文化や宗教や思想などは
    争いの火種でしかない。それらを完全に駆逐した時、永遠の世界平和が実現する」という
    思想に基づき、国家の解体、全世界の「機関」以外の存在の武装解除、全宗教の禁止、
    私たちの現在の価値観で持っている内容である、「自我」の統制、娯楽の禁止がなされます。


      そしてその介入を拒否する地域、反意を唱える人々を、武力鎮圧するという、極めてその思想に
    矛盾する行為による武力支配と、「自我を抑える事による理想実現」と
    「諸悪の根源である『自由』の否定」という洗脳教育、というよりも、思想の概念すら
    ある意味ではなくなる、「絶対倫理」と「絶対道徳」のみに従う、自由意思の強制放棄という
    強制的同化による、「『不平等』『対立』の消滅、「究極に進化した人類のユートピア時代」と
    主張されるものの強制に伴い、「多元的文化の消滅」ではなく、
    「文化」と「自由意思」の消滅という、極めて衝撃的な世界が成立する事になります。

     大戦から14年後の2028年現在、その支配下にない存在は、わずか一つの
    独立都市のみ、その都市である、「東京」へと、「機関」による統治下の「筑波」に生まれ、
    そして育った、「自我」と「価値観」を持たないよう育てられた少年、13歳の少年である
    「未名守 徹」が、迷い込むことから、本編は始まります。


     人間性というものを喪失している、「徹」に対して、スパイではないかという疑念からの
    24時間体制の監視を行おうとしていた「東京」の人々は、「蒸留水とカロリーブロックのみの食生活」
    「『色』という視覚的差異すらない世界」「『平和』と『平等』だと、主張される状態ですら、
    『喜び』とすら感じず、『権利』ですらない、権利という概念自体がそもそも害悪として否定され、
    『義務』だとしか考えていない『機関』下の市民達」の状況と、その下で育った徹に対し、
    次第に「心」をなんとか開く・・・いや、『再生』できないかと、徹に接するようになります。


     詳しいストーリーは、実際プレーをして頂いた方が、何よりご理解頂けるかと思いますが、
    あえてレビューさせて頂くならば、というよりも、僕のできるレビューだと少しお話が
    ずれるかと思いますが、この作品自体が発表されたのは、おそらくは表現規制問題が
    発端かと思いますが、基本的には、「人間性」とその「自由な発露」というものが、
    何よりも、主題かと思われます。そのような多義的な「自由」の中でも、
    特に「精神的自由」が絶対的に守られなければならないのは、
    この作品の主題である、「『人間性』の尊さ」だと思います。


    (以前にも書かせて頂いたのですが、蛇足的に申し上げれば、
    憲法学的な意味では、、精神的自由を制限した場合、他の自由と比べて、
    以前書かせて頂いたように、「民主政の過程による回復」が
    理論上できなくなりうる危険性が否定できないという意味で、
    その制約は慎重かつ民主主義と立憲主義に必ず基づかない限りは、
    到底認められるべきものではない、という事もありますが、
    その理論も、何よりその根源は、「『人間性』の尊さ」
    「人間が生来持つ『人間が人間であるための権利』」という、
    この作品で描かれているものだと思います)

                            • -

    P.S
     ちっともレビューになってないですね。。。作者様、申し訳ありません(汗)


    P.SのP.S
     レビューらしいことを書くとするならば、このゲームは一度目のプレーでは
    選択肢がなく、サウンドノベル的に話が進んで行き、最終的には
    いわゆる鬱エンドになってしまいます。鬱エンドというと語弊があるかもしれません、
    人間性を持った人間」がこの世に2人だけになってしまいます。


     しかし、二周目というのでしょうか、一度クリアしたあともう一度プレイすると、
    今度は選択肢が出て思考や行動を選べるようになります。
    その結果次第で、ハッピーエンドになることができます。
    実に深いテーマのゲームなので、グラフィックのノベルもBGMも一級品ですし、
    ぜひ未プレイの方はプレイしてみてくだされば幸いです。


    ※ただいま、さんだーぼると様のホームページが、ウィルスに感染して消えてしまったようです。
    こちらの方でinsider様がブログに退避されていらっしゃいますが、「ラスト・ピュリファイ」を含め、
    insider様の作品は、極めてお仕事が忙しいのと、恐らく復旧が難しいため、
    ダウンロードできないようです。ご災難申し上げますのと、ご無理のない時にでも、
    カムバックして頂ければ幸いに思います。

    AX



    ○後記
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