サブプライム問題についてのメモです

○前書き・・・80年代に起きた日米のそれまでのバブルとの違い

 後から見れば「2年後の金利が跳ね上がるローンを低所得者が組んだら
貸し倒れが多くなる」というのは当然なのでしょうが、アメリカは
日本と同じく土地バブルだ、と言い切るには、サブプライム問題は
難しいようです。


 普通は銀行が審査をしてお金を貸して土地建物を買うと思いますが、
アメリカの場合は日本の場合の住専、住宅専門金融公庫のように、というより、
たった20年前に味わったS&L(Savings and loan association )
の経験の熱も冷めないうちに、再び一見似たような事態に陥ってしまいました。
それが何故なのか、それがどのようなものか、考える必要があると思います。



○債権の証券化と「金融工学


 S&Lや日本の住専の場合、いわゆるノンバンクで銀行から資金を得て、
間接的に購入者に融資をするため、融資基準が甘くなるものの、
基本的には土地が下がらない、もしくは現状と変わらないなら、
問題はなく、土地が値下がって担保価値が下がり追加担保を要求されて
破産する、というような形だったかと思います。


 ただ、アメリカの場合は特殊で、「Return the key」担保価値が下がっても
銀行が不動産を差し押さえられれば返済になるという、不動産を
明け渡したらいいという制度なので、日本のバブル期に大量に生まれた
自己破産者の代わりに、日本の場合よりもさらに巨額の不良債権が、
塩漬けにしておくわけにもいかず住宅市場で売却され、さらに不動産価格が
下がり、さらに・・・といった悪循環があるのがあります。


 ここまでは普通のバブルでしたが、今回の金融不安の原因は、
かつてはローン債権が焦げ付くだけでしたが、ローンを貸したということは、
どこかからお金を持ってきたということですが、それはローン債権を担保としたローン、
正確に言えば貸付債権担保住宅金融公庫債券(Residential Mortgage-Backed Securities)
などの、住宅ローン担保債権、つまり、信用度の低い人Aに3000万円を高い金利
例えば年率8%で貸して儲けたいが、その貸すお金を集めるためにその貸す債権Xとして、
「RMBS(住宅ローン担保債権)」として、一口100万円を30口、年利6%で
売れば、金利差の差し引き2%の儲けになります。それだけならいいのですが、
さらに信用度が中程度のBに5000万円を年利5%で貸したいけど、そのお金がないので、
それを担保に一口100万円で年利3%で50口で売られた債権Y、その他のCやDなどいろいろな
信用度や、不動産以外の融資もごちゃまぜにして、上のAとBの例では、7000万円の
債権を700口で年率3%の利率で売れば、3000万×6%+5000万×3%=4%以上の
金利の債権にして売れば、その差額で儲けられるように、いろんな形のいろんな利率の
いろんな債権をごちゃまぜにして複雑化し、資金調達をしやすくするのが名目で生まれたのが、
「債権の証券化」でした。


○「債権の流動化」は資本の投機化では


 金融の投機ファンドなどの批判はあるものの、債権の証券化自体は資金調達を
容易にするため、有用で否定するべきではないという声がほとんどですが、
僕自身はそもそもが金融国営化論者ですし、それが無理ならせめて債権を担保とした証券は
禁止するに法整備をした方がいいと思います。


 なぜならその場合、第三者に当たる証券を持つ人は、どこの誰のどんな人に
貸したか分かりませんので、今回のようにあとあと問題になりますし、貸す側の
例えば銀行も、債権を売って資金は確保できるので、よくいえば資金の流動化になりますが、
悪く言えば資本の投機化になると思うからです。


 それに対しての批判として、「信用力の弱い個人や中小企業に死ねというのか」という
批判があるかと思いますが、そのときこそ、国がファイナンスをするべきだと思います。
そうすれば投機にはなりにくいですし、公的資金を後から注入することを考えれば、
そちらの方がいいと思います。


 先述のは「不動産」に関する「サブプライム」=「メインでない、不良顧客」に関する
問題でしたが、先述、「いろんな形の、いろんな利率の、いろんな債権」と
申し上げましたように、問題が不動産に関してのみで済めば良かったのですが、
ちょうど90年代から00年代は、米英日は新自由主義からの民営化とIT革命や
バイオ・ナノテクなどのハイテク産業に無限の可能性を見いだしていて、かつ、
いわゆるかつての東側諸国であるロシア、中国などの大国やインドやブラジルなどの
市場経済化と工業化が起き、投資資金の需要は極めて大きかったので、
どんどん世界中の投資家・投機家・金融機関がそれらの企業のや新興国への
融資を行われ、しかしそれで終わらず、さらにそれに加えて金融工学は、
「融資が貸し倒れた時の保険」も生みだしました。


 それがクレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap)
のようですが、複雑なことは僕は分からないのですが、それさえ債権化され、
先述の通り、「いろんな形の、いろんな利率の、いろんな債権として
最終的に生み出したのが、「金融工学」で生まれた債務担保証券(
CDO=Collateralized Debt Obligation)のようです。


○おわりに・・・資本の統制を


 ようはギャンブルと同じようなもので、「誰かが損をするのは
分かっているが自分じゃないはず」という確信=「信用」を基礎においた経済が、
現代資本主義の本質的なもので、旧来の社会主義が問題としていた
生産手段の公有化よりも、本来的には「資本」とは生産手段だけでは
ありませんから、金融の公有化が必要だと個人的には思います。


 ただ、現実的にはそうはならないでしょうが、少なくとも金融自由化の波は
止まり、何らかの形で「資本のルール、統制」がなされると思います。
例えばノンバンクを一定の規模以上は認めず、銀行、保険会社の業務を
完全に分割し、会計基準を見直し、国民年金などの公的資本を返済の見込みはあるが、
保証人のいないことや規模の小ささなどで信用度の低い個人や企業への
融資に回し、そもそも借りれない方には公営住宅を提供する、
ただ、かといって以前のように閉鎖的市場など経済ナショナリズムには陥らず、
あくまで自由経済の立場を堅持しつつ、外資など短期投資を長期投資に回さずにするという、
「僕が言わなくてもたった30年前には普通に行われていたようなこと」に、
回帰していくかと思います。


 ただ、BRICsのような新興工業国の発展による資源の需要の高まりと
それによる資源高の利益を得るアラブ・ロシアなどの資源国と、
一気に単独行動主義路線ではすまなくなったアメリカが、
果たして自由経済原則を守るかどうかが、日本の命運を握っているかと思います



○後記
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