『さよなら絶望先生』(講談社コミックス・久米田康治先生)

 「さよなら絶望先生」は2007年現在において少年マガジンで鬼才・久米田康治先生の
描かれていらっしゃる漫画です。ジャンルはそこらにある「ギャグ漫画」とひとくくりには
できない、なんといいますか、情報量やギャグなどいろいろな意味で非常に「濃縮」された
作品です。ストーリーはある男性教師と女子高生の出会いから始まります。いきなりの
ブラックユーモアとして「首吊り」シーンから始まるというのは、私の知っている限り
言うまでもなく前例がないと思います。


 そうして赴任した先生とクラスの生徒たちが描かれていくわけですが、
前作『勝手に改蔵』と違う点と共通する点があります。異なる点はまずストーリー全体
としても学園生活や家族関係など、ディテールが描かれていて面白いのと、
共通する点は、非常にシニカルですごくウィットに富んだギャグという事です。
そういう意味で、「『』あるある!』と非常に同感して最高にウケる人」と
「細部まで描かれているのは見えても、同感しないないし意味が分からず面白くない人」の
両極端に分かれる事が、共通するもう一点としてあります。



 と、ストーリーやギャグをあまり細かくレビューするのは難しいとして、
申し上げずあえて思いますことを述べさせて頂ければ、
「濃縮」という言葉を最初の方で使いましたが、連載されている少年マガジン
「現在進行で読む面白さ」と、加えて「勝手に改蔵」と共通する点としての
「コミック版で読む面白さ」の二つがあるという事です。
 いざ、コミックスを手にされたら、表紙から裏表紙まで、細部にわたって情報量的にも
ギャグ的にも非常に「濃縮」されている作品で、連載中のマガジン紙上で読んだからといって、
コミックスを読まないでいるのは、あまりにもったいないほどの面白さです。


 「勝手に改蔵」に共通するものとして、久米田先生の漫画としても文章としても
あらゆる意味での天才的な表現力がもう一つとしてあります。
 特にコミックスは、連載紙上の内容にかなり著作家の方の表現する自由な幅が
ある点を最大限に生かして、「コミックス各巻がそれぞれオリジナルコミックス」という感じで、
「漫画としても文章としてもあらゆる意味の天才的な表現力」と先に申し上げましたが、
巻末などに作品とリンクして描かれているエッセイ文も、非常に斬新な形の面白さで、
「漫画家・久米田先生」としても天才的だと思いますが、「著作家・久米田先生」としても
天才的で、うまくいえませんが「あらゆる角度からの表現の形の追求を試みている作品」
という点が、「勝手に改蔵」と共通するさらに一点としてあります。


 ・・・と言葉を尽くしても、実際お読みにならないと何を申し上げているのか分からない
ですよね、申し訳ありません(汗)
 もう一つ「勝手に改蔵」と共通して言える点がありました、
それは、


「ま ず は 読 め
        話 は そ れ か ら だ」


・・・という、レビューにならないような、でもそうとしか言えないような事です、
このレビューを読んで頂いている貴方にとってこの作品は「最高に面白い」か、
「最高につまらない」かの両極端のどちらかなので、どちらか試しに賭けてみる、
というだけの価値がある作品です。

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