貧困と少子化・・・新しい階級社会化の恐怖

○「貧困の再生産など起きない」

 これは、2006年9月12日(火)発売 週刊SPA!2006年9月19日号49ページにて、
自民党の議員が匿名で発言したもので、「貧困の再生産など起きない。彼らは子供さえ
持てないからいずれいなくなるだろう」という発言を行ったものです。


しかし、皮肉なことに2007年3月7日の朝日新聞などのマスコミ報道で、
非正社員男性の結婚割合、正社員の4割 厚労省調査」と厚生労働省の調査で、
以下のように記事では書かれています。

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 非正社員の男性が結婚する割合は正社員の4割――こんな実態が7日、厚生労働省の調査で明らかになった。既婚者について子どもがいる割合を妻の仕事別にみると、非正社員は正社員の半分だった。非正規労働が増えるなかで、雇用や経済基盤の不安定さが結婚や出産を阻む原因の一つとなっていることが、改めて浮き彫りになった。


 02年10月末時点で20〜34歳だった男女を対象に、同年から毎年同じ回答者を追跡調査している「21世紀成年者縦断調査」で今回が4回目。約1万9千人の回答を集計した。


 1回目の調査で独身だった正社員男性のうち、これまでに結婚したのは15%だったのに対し、非正社員は6%にとどまり、2.5倍の格差。無職は4%だった。結婚した女性の割合は、正規、非正規、無職で大きな差はなかった。


 「結婚したい」と考えている独身者は、男性の場合は正社員69%、非正社員50%、女性では正社員73%、非正社員63%。男女ともに正社員の方が結婚希望の割合が高かった。


 妻の仕事別に子どもが生まれた割合をみると、正社員の場合は33%で、非正社員の16%を大きく上回った。専業主婦は31%だった。厚労省は「正社員なら育児休業を活用しやすいなどの状況が影響している可能性がある」とみている。

http://www.asahi.com/life/update/0307/012.html
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 この統計をどう見るべきでしょうか?


 おそらく、論者の中には、「非正社員の半数は結婚したいと考えていないのだから、
低いのは当たり前だ」と、非正社員が自ら望んで結婚を忌避している、
とおっしゃるかもしれません。


 しかし、それは大きな間違いだと思います。私は「非正社員の半数は
結婚したくないと思っている」のではなく、「非正社員は結婚する経済的条件などの
諸条件が満たされていないから、結婚したくても諦めている」のだと思います。


 別の調査で、もっと厚生労働省がはっきりと認めているのは、
2006年版「労働経済の分析」(労働経済白書)があります。
そこにおいては、

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低所得の若者の増加が結婚の減少につながり、少子化を促進する主因になっていることが、厚生労働省が8日まとめた2006年版「労働経済の分析」(労働経済白書)で分かった。白書では人件費抑制を目的に、若者の非正規雇用が増えていることについて「長期的・継続的な視点を欠く」と強く批判した。


 白書によると、34歳以下の男性の場合、最新調査(02年)では、正規労働者で結婚している人は39.9%だったのに対し、非正規労働者では13.5%。パート・アルバイトに限ると7.7%まで低下する。


 非正規雇用は拡大しており、1996年の1043万人から、2005年には1591万人に増加。一方で、正規雇用は96年の3800万人から3333万人に減少しており、非正社員は5人に1人から、3人に1人の割合になった。特に、週の就業時間が35時間以上のフルタイムの労働者とほとんど変わらない働き方をする非正規労働者が増えている。


 特に20−24歳の非正規雇用の増加が顕著で、雇用者に占める非正規雇用の割合では1992年には10.7%だったのが、1997年には17.3%、2002年には31.8%まで増えた。25−29歳、30−34歳でも1990年代を通じて倍増し、2002年には2割を超えた。


 25−34歳について、独身でとどまっている理由をみると、「適当な相手にめぐり合わない」が最も多かったが、次に「結婚資金が足りない」の割合が高かった。特に、1997年以降では「適当な相手」の割合は減る一方、「結婚資金」の割合は増加している。


 新卒者の就職率は改善傾向になったが、「就職氷河期」に良質な就業機会を得られなかった「年長フリーター」について、白書は「企業が人物本位で採用の門戸を広げていくことが期待される」と強調。具体的には新卒者を中心にした「定期採用」の仕組みを複線化していくことや、採用年齢を引き上げることなどを強く求めた。


http://news.livedoor.com/article/detail/2295912/

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○新しい優勢主義的「歪んだユートピア
 

 これらの調査を見る限り、「非正社員は結婚意思がない」のではなく、
「結婚したくても現実的に考えて経済的なことから諦めている」
ということが実際だと思います。だとしたら貧困の再生産はなされず、恐ろしい事に
優生学的に「優れた」子孫だけ残っていくのでしょうか?
また、それが健全な社会なのでしょうか?


少子化対策を訴えながら貧困の再生産はないと発言する自民党議員たちは、
本当に少子化対策をする気があるのでしょうか。彼らは安易に
「低賃金労働の担い手は外国人労働者を雇えばいい」と思っているのかもしれませんが、
保守層を支持母体としている保守政党の彼らはいざ外国人労働者が入ってきて、
諸外国のように「移民問題」が起きた場合、移民排斥を一転して訴えるのは
目に見えていて、非常に矛盾した、行き詰まるのが目に見えている政策です。


 話が逸れましたが、貧困、ワーキングプアにある人たちに故意に子孫を残させない
というのは、倫理的に言って優生主義的で恐ろしい話です。また、そもそも
ワーキングプアなどというような状態を放置しておくこと自体が、
民主主義社会として恥ずべき「悪」です。


 私は外国人労働者の方を受け入れるなと主張しているわけではありません。
そうではなく、現在の自民党が主張している外国人労働者受け入れ案と
貧困が原因の少子化の状況は、、優生主義的で「日本人」である富裕層〜中産階級と、
「ガイジン」である貧困層外国人労働者という、階級社会化を起こすであろう、
富裕層〜中産階級にとっての「歪んだユートピア」なのではないか、そう思います。



○後記
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